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第11話 エルメティア帝國の皇子

Author: 波 七海
last update Last Updated: 2025-12-06 21:33:34
 デスペラント大陸。

 人間や亜人からは魔大陸と呼ばれている場所の南方に、その国家は存在した。

 中央アルガノン大陸有数の強国であり、最大の版図を誇るエルメティア帝國である。

 現在でこそ落ち着いているが、最盛期では12の騎士団が周辺の8か国を滅ぼしたほどだ。

 彼の国は人間列強国7か国同盟軍の盟主であり、亜人族と連合を組んで、魔族領――デスペラント魔帝國へと侵攻していた。

 ここは天まで伸びようかと言う帝城の謁見の間。

 広々ひろびろとした室内に堂々と鎮座している玉座に腰を降ろすのは、帝國の第1皇子であり、皇太子たるガイナス・エル・ティア・クラウレッツ。

 彼は昨夜見た夢についてボーット考えを巡らせていた。

 幼少の頃の温かい想い出だ。

 夢に出てきた少女の名はシャーロット。

 妖精族であり、元婚約者でもある。

 11年前の戦争終結のために、当時の魔王の養子としてシャーロットが迎えられ、そしてガイナスが彼女と婚約関係を結んだと言う経緯がある。

「殿下! ガイナス皇太子殿下ッ!!」

 そこへガイナスの思考を打ち破る大声が、耳に突き刺さる。

 突如として重厚な扉が力強く開かれて、駆け込んできた者がいた。

 とても頑強な造りになっている上に、重量のある扉を容易く押し開く辺り大した膂力の持ち主である。

 ガイナスはシャーロットとの想い出をぶち壊した大将軍に恨みがましい視線を送る。

 取り乱しながら足早に歩いて来る彼に、ガイナスは怪訝な目を向ける。

 だが、礼を失してしまうほどの我の忘れように、ガイナスもかなりの重大事だと理解して気持ちを切り替え、僅かに心を引き締めた。

「落ち着け、リシャール。貴様らしくもない」

「はッ……申し訳ございませぬ……私としたことが取り乱しました。お見苦しいところをお見せして――」

「良いッ! そんなことより余程のことがあったのだろう? 貴様があのような態度をするほどだからな」

 慌てて謝罪の言葉を口にしようとした大将軍リシャールを制して、ガイナスが問い質した。

 切れ長の目尻を吊り上げて、鋭い視線を向けて。

 リシャールは、深呼吸をすると先程までとは打って変わった様子で粛々と報告を始める。

「勇者殿が、魔王イルビゾンを封印することに成功したのですが……」

「ほう! そ
波 七海

お読み頂きありがとうございます! 新たな展開の始まりです! 魔族のみならず、人間達までもがシャーロットに絡みゆく。 引き続きお楽しみください!

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